行商の帰りの山道で、飛騨山中の部落の青年・蓑吉は、若い女の呻き声を聞き駆け寄った。その娘は、庄屋の娘・お絹で、失神した彼女の太股には白蛇が巻き付いていた。 やがて我に返ったお絹の話によると、夜明けに自分の名を呼ぶ幻の女に誘われるままに山奥に踏み込み、何者かに辱めを受けたという。お絹の行方を探していた村人たちは、蓑吉を誘拐犯と誤解した。 しかし数日後、庄屋がお絹の婿に蓑吉をほしいと頼んできた。お絹は蓑吉と一緒になれないのなら死ぬと言って家を出てしまったという。蓑吉は許婚のきぬを諦め、庄屋の頼みを承諾した。 結婚初夜に、蓑吉は、お絹が実は白蛇の化身・桜子であると知らされ驚いた。一年前、蓑吉は山道で傷ついた白蛇を助けた。それからまもなく笛の音に惹かれて蛇塚に入ると、桜子と名乗る年増女が現れた。二人は熱い契りを結んだ。桜子の虜となった蓑吉は、幾度となく彼女のもとへ通い続けた。息子の挙動を不審に思い、尾行した母・みねは、草むらで白蛇と戯れる蓑吉を見つけ、白蛇を追い払った。 だが蓑吉を忘れることができない白蛇は、お絹の体に乗り移り、再び彼に近づいてきたのだ。怖れる蓑吉に彼女は激しく愛撫を続けた。それ以来お絹は蔵の中に監禁されたが、狂ったように蓑吉の名を呼び続けた。 お絹の診断を頼まれた好色の医者は、彼女を犯そうとして逆に喰い殺されてしまった。 蛇の仕返しを恐れたみねにせき立てられ部落へ帰った蓑吉は、許婚だったきよと再び結婚を固く約束した。 しかしまたしても蓑吉は笛の音に誘われ、狂ったようにお絹のもとへ向かった。二人は激しく抱擁したが、村人たちとともに駆けつけた旅僧が念仏を唱えると、お絹は失神し、蛇の精とともに命を絶った。
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